13面体の賽子

最後に決めるのは自分だ。断じてサイコロではない。

続きが気になるが次回作の出版が未定or完結したラノベ3選 100日ブログカウントダウンマラソン60日目

読書関連の記事で

昨日、本に関する記事を書いて、ふと思い出したことがある。人生に影響を及ぼし、尚且つ手に汗も握り、結末を渇望し青春(?)を謳歌する際の友となり糧となった本のジャンルがあることを。・・・ラノベである。

サクッと読めて内容はしっかりと作りこんであって、傑作と呼んでも差し支えが全くなく、スタンディングオベーションすら捧げたいほどの作品が。それにも拘らず、完結であったり先が分からないままに数年過ぎてしまった作品が。仙崎の中には三つある。本日はそれらを紹介していきたい。(出来る限りネタバレは無い方向で)

絶望と不可能を異常なまでに嫌う男子高校生と愉快痛快な仲間たち

超人間・岩村 (集英社スーパーダッシュ文庫)

超人間・岩村 (集英社スーパーダッシュ文庫)

 

 仙崎が高校生の時に出会った名作。「無理」「不可能」といった言葉を心の底から嫌う高校生・岩村はいつしか自身が通う高校内では「超人間」として有名になっていた。彼とその仲間たちが所属するアメコミ同好会が、様々な校内外で起こる出来事を何とか丸く収めたり解決したりしていくというストーリーになっているのだが、登場人物のかけあいや、至る所にちりばめられているギャグ要素、主人公の対極として物語の中で位置付けられている、「完璧超人」の異名をとる生徒会長と生徒会の面々による暗躍、と今後の展開を大いに期待させる内容となっている。

しかし、次巻が全く刊行されない。

そしてこのラノベ、名言が大盤振る舞いされているのである。

ネタバレになりそうだが、最後の方から引用を。

「そんな事のどこが『無理』だ!『不可能』だ!いいか!本気で愛しているんなら躊躇うな!人間はみんな死ぬんだぞ!そのうち本当に何もできなくなるんだぞ!」

そして陽春は、力の限り叫んだ。

「俺がお前の力になってやる!できない事とできる事の違いを教えてやる!」

―『超人間・岩村』p274

彼が絶望や不可能を嫌う理由を知ると、この主人公を単なる「暑苦しい」奴だとは思えなくなる。

 

退かず戦う死神と超絶不運の女子高生と

サバキの時間―SLEEPLESS SHEEP’S JUDGE (角川スニーカー文庫)

サバキの時間―SLEEPLESS SHEEP’S JUDGE (角川スニーカー文庫)

 

 

サバキの時間―地獄の斧と亡者の鎌 (角川スニーカー文庫)

サバキの時間―地獄の斧と亡者の鎌 (角川スニーカー文庫)

 

 次はいかにもラノベらしい雰囲気漂う二冊である。

かなりの不幸体質の女子高生、伊吹綾香は、ひょんなことから「死者」に間違われ、バス事故に巻き込まれてしまう。実はそのバス事故を起こした人物は冥界から現世に戻ってきた「死者」であり、その「死者」を捕縛しに冥界からやってきた輪廻護法官:サバキと事故をきっかけに出会う。それ以降様々な「死者」を巡る事件に巻き込まれつつも、輪廻護法官であるサバキの手伝いをしつつ彼の師匠を殺害した犯人である「死者」の情報を集めていく…

全体としてテンポよく進んでいく話に一話完結型の内容構成となっている。

物語のアクセントとして出てくる「死者」の特殊能力、諺や四字熟語などを基にした「冥界刑具」、そして輪廻護法官の自身の魂を削って作る武器。

これらの要素と、「死者」とカルマに関する冥界のシステムを根底に置きつつ、話が進んでいく。

この作品の見どころは何といってもどの登場人物も皆必死であるという点であろう。

『超人間・岩村』とはまた違った意味で、何らかの事情から必死に何かをしようとする登場人物が多数登場する。

2冊で完結、という形を取ってはいるが、続きが気になる。とはいえ2冊目の終わり方が非常に綺麗なので何とも言えないのだが。

ハードボイルドアクションとかしっかりした世界観とか

 

 

 

 

 

 

 ラノベの中ではSFアクションに非常に特化した部類に属していると思われる。人類が地球を捨てて新たに居住し始めた惑星において、その惑星にもともと住んでいた生物(原生種)と戦うために生み出された「アルティメット」という戦闘に特化した種族。原生種を粗方相当し終えた後、人類は「アルティメット」の戦闘能力を恐れ、彼ら彼女らを排斥した。その排斥に恨みをおぼえた「アルティメット」の中にはテロ組織を作る者たちが存在し、人類に牙をむいていく―――

民間の軍事産業の中では弱小の部類に入る会社の社長を務める少女と、元・原生種を掃討する特殊部隊の凄腕の戦士だった「アルティメット」を含めた様々な社員たちが「アルティメット」の巨大なテロ組織と戦っていく、というのが全巻を通じた内容構成である。

様々な武器や戦闘術、SF技術などの魅力的な描写は勿論のこと、淡々と描かれる戦闘シーン、敵味方関係なく笑いを誘うギャグシーン、「アルティメット」達の悲哀、テロ組織の意外な目的、と重厚な世界観と相俟って壮大な物語を織り成しているのだが、5巻、6巻において何とも駆け足感が否めない。

もう少し続いてほしかったし、完結はしてほしくなかった作品でもある。テロ組織との攻防戦や、他の民間軍事産業との関連、惑星を巡る巨大な陰謀やら政治やらと、面白い要素が多々ある作品でもある。軍事・SF好きにとってはたまらない作品なのではないかと。

 

60日目。